角質層(表皮の中で最も外側の層)の解説と働き

角質層stratum comeum

角質層死んだ細胞からできている角質層。ケラチノサイトの分化過程の最終産物です。生体を強力に被覆しておりこれを失うと人は、生存することができません。

人体の最外層の細胞層で、厚さは平均約0.02mm。
約10~20層、死んだ細胞である角質細胞が互いに重なり合っており(鱗のように堆積している)、平坦です。
他臓器では類を見ないほどに高度に機能的分化を果たした薄膜状構造です。

その約50~70%が水分で構成されています。
細胞と細胞の間にはラメラ構造からなる細胞間脂質が詰まっています。この構造はよくレンガとセメントに例えられています。
バリア機能や水分保持機能において重要な役割を果たしています。
角層は同じ厚さのプラスチック膜並みの水の通しにくさを持っているのです。水分非透過性のバリアとして重要な機能をつかさどっています。
形態学的には、ケラチンフィラメントで満たされ、核および細胞内小器官の消失、ケラチンパターンの形成、周辺帯の出現などの重要な変化が生じます。

また、紫外線の防御、抗酸化にも寄与しています。
単細胞生物の細胞壁に相当するものが角質層です。
強くこすって洗浄すると24時間は回復しません。
また角質とはケラチンの別称でもあります。

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角質層のケラチノサイト角質細胞(コルネオサイト)

ケラチンパターン

角質層を形成する角質細胞は、ケラチノサイトの分化過程の最終産物です。
顆粒層の直上で、「カスパーゼ 14」という酵素により細胞死(アポトーシス)を迎え、すでに細胞核が自己消化された死細胞なのです。細胞生物学的には死んだ細胞です。

したがって、表皮の大部分を構成するケラチノサイト(角化細胞)とは、別のものとして考え角質細胞(コルネオサイト)と呼ぶこともあります。
ケラチンで満たされており電子顕微鏡で観察すると、ケラチン繊維とフィラグリンが規則性を持って配列するためにケラチン紋様(ケラチンパターン)と呼ばれる独特の構造が見て取れます。

そんな角質層のケラチノサイトは、細胞自体が膜状です。
扁平で不規則なうろこ状の、硬く抵抗性のある角質化した膜が、約10~20層、互いに重なり合って角質層を形成しています。
ただ、10~20層と言っても、日数や厚さなどの数値は身体の部位・顔の部位によって、また個人差などによって大きな違いがあり、例えば 手掌、足底に限っては角質層はきわめて厚く、約50層にもなります。
こういった部分の角質層最上部には、さらに明るく見える「透明層」が存在しています。
角質層は酸に対しては抵抗力がありますが、アルカリ(石鹸水)の中では膨化します。
また、角質形成はビタミンAによって調節され、ビタミンAが不足すると過剰な角質形成が起こります。

また、角質細胞には通常よりも厚い細胞膜が存在し、さらにその内側には周辺帯と呼ばれる、極めて強靭な裏打ち構造が存在しており、人体の最外層の細胞として、生体を強力に被覆しているのです。

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角質層への水分補給

皮膚の最外層である角層の水分含有量は、見た目の美しさを最も左右します。
皮膚自身の水含有量は約70%ですが、その中で角層は正常な状態で約20~30%の水分が含まれています。
角層細胞は、バリア膜の構成単位となるため、生命活動を行うための小器官をすべて失っています。そのため、血管から組織液(体液)を補給されることはなく、 組織液に浸された生きた表皮と接した湿った下層から、外気に接して比較的乾いた表層まで、水分含有量に勾配が生じています。
しかし上層に向かって水分を失って行くばかりではなく、角質細胞内にある天然保湿因子(NMF)によってある程度の量を保持し、湿った環境から 水を吸収するという能力を持っています。このことを利用することにより化粧水や乳液などのスキンケアで角層を保湿することが可能となっているわけです。

角質層へは体内から絶えず水分が供給されており、角質層表面から外界へ、ほぼ5mgcm-2h-1の割 合で水分が蒸散しています。
反対に、角質層中では真皮の方向に向かって水分量は15wt%から40wt%へ徐々に増加しています。超薄の角質層内に水分の濃度勾配があるのです。
したがって、角質層中の約20wt%の水分は供給排出を繰り返す定常状態にあり、角質層中の水分子の振る舞いは非平衡状態にあると言えます。
そのため、角質層の構造が一様であっても、水分量は角質層中の深さによって勾配を持ちます。
注目すべきことは、角質層から真皮に向かった際の、角質層と顆粒層の間の水分量の増加です。
顆粒層では最終的には70wt%程度にまで達します。このため、顆粒層中で細胞接着に寄与しているタイトジャンクションが、皮膚中の水分保持機能において重要な役割を果たしているという指摘が最近言われています。
正常な角質層における水分保持機能は、角質層中層が最も高く、下層と最表層が低くなっています。これは新しく出来上がったばかりの角質層は天然保湿因子の量が少ないためです。最表層において水分保持機能が低い理由はわかりますよね。
角質細胞の表面は、コーニファイドエンベロープと呼ばれるインボルクリンやロリクリンなどのタンパク質からなる堅固な膜に覆われています。その最外部にωーヒドロキシセラミドが結合し、それが土台となって層構造(ラメラ構造) を持つ細胞間脂質が形成されます。この層状構造と肌の状態の関係性が大きく、また層間水の存在が示唆されています。

角質細胞の脱落

角質層のケラチノサイトの最外層(表面)からは役目を終えた角質細胞が剥離 ・脱落を繰りかえし、いわゆる「垢」となり、剥がれおちていきます。
顆粒層が角質細胞になってから垢の1部になって体外へ脱落するまでは約14日で、細胞が絶えず剥がれ落ち、厚い皮膚の場合はすり減っていき、剥がれ落ちたものを補うように基底細胞層では細胞分裂により新しい細胞が供給されていき、基底細胞層から皮表へと上行する流れの過程で分化を遂げながら、最終的に角質層に到達するのです。
表皮全体として消失と供給のバランスが自己複製により見事に維持されています。

ターンオーバー

角化細胞が基底細胞層で分裂し、最終的には垢となって剥離していく過程をターンオーバーと呼び、正常では、ターンオーバー期間は約45日で、もちろん部位によって異なり10~45日くらいと考えてよいと思います。
ターンオーバーが異常に促進されると、基底層での細胞増殖能やケラチン合成、Klk8の発現が過剰になり、ターンオーバーが早まります。これは細胞が最終分化しきらないうちに表皮細胞が剥離することになり、十分な細胞強度をもたない細胞が外界にさらされ、バリア機能が低下することになります。その結果、乾燥や肌荒れ(にきび等)アトピー等が生じると考えられます。
上腕屈側の角層は1日当たり0.6~0.9層が生理的ターンオーバーで剥離します。これを全身の皮膚に換算すると6~14g、毎年0.5kg以上の皮膚が入れ替わります。
また、皮膚表面の汚れが付着したままだと正常な表皮のターンオーバーが阻害されることになります。

不全角化

炎症などの原因で表皮の増殖が著しく高まったときには角化の速度も異常には早まって、核の残ったままの角層細胞が作られる場合があります。
これを不全角化と呼び、顔面では肌荒れ 頭皮ではふけ症の人に多くみとめられます。

角質層上層へ移動するに従って、細胞間脂質は、分解酵素のステロイドスルファターゼやリパーゼにより脱硫酸し、親水性部分が離開し、分解されます。
これにより各種タンパク分解酵素(顆粒層から発現する蛋白分解酵素のカリクレイン8(Klk8)など)がコルネオデスモソームにアクセス可能になり、細胞間のデスモグレイン(DSG1)が分解され、よって細胞間接着面が消化され、最終的に角質は徐々に剥離、脱落します。(角化の終焉)。
接着と剥離が精妙に制御されるため、角質層は一定の厚みに維持されるのです。
ビタミンAはコレステロールスルホトランスファーゼを阻害し、硫酸コレステロールを減少させ、これにより角層の脱落が促進されると考えら れています。

胼胝(callus:べんち、たこ)

皮膚に摩擦刺激が持続的に加わると、細胞とケラチンの産生が増加し、角質層の異常な肥厚である胼胝(たこ)を生じます。

角質層の働き角質層内で水分はどのように保持されている?

角質細胞の様子

正常な角質層は乾燥した大気中でも水分を保持することができ、皮膚の滑らかさや柔軟性を維持しています。それでは、皮膚はどのように水分を保持しているのでしょうか?
角質層中の天然保湿因子には、約40%のアミノ酸が含まれています。アミノ酸と水は非常に結合しやすく、アミノ酸の構造の中にも、水の構造にもそれぞれプラスの電気を帯びた部分とマイナスの電気を帯びた部分があり、イオン化状態になっています。プラスとマイナスが引き合ってくっつくように、結合したがる状態なのです。このような性質によって皮膚のアミノ酸の周りに水の分子が集まって結合した水の状態を一次結合水といいます。この一次結合水の周りを囲んで、イオン化した水が幾重にも取り巻いて集まったり、結合した状態の水を二次結合水と呼びます。これらの結合水に対して、皮膚のアミノ酸や結合水と結合せず、割合と自由に動き回れる水を自由水と 呼びます。
乾燥した空気中では、自由水が真っ先に、つづいて二次結合水が失われやすく、一次結合水は失われにくいといわれます。
なお、正常な角質層では乾燥重量の約33%まで結合水として存在しうる環境にあります。

バリア機能や水分保持機能に影響を及ぼすのは、外気の乾燥・紫外線・ストレス・加齢などです。
また、老化に伴いターンオーバーが延長することにより、角質層の層数が増し、個々のケラチノサイトの表面積も大きくなるため、細胞間の透過経路が長くなりバリア機能が増す傾向が見られます。一方で、体内から角質層を経て皮膚表面への水分補給が望めず、また角質層における水分保持物質が少ないこともあり、高齢者の皮膚は乾燥しやすくなるという側面もあります。
つまり、ドライスキンとバリア機能の喪失とは必ずしも相関しないことがわかります。

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角質層の進化

角質層は、もともと水中に生きてきた私たち人類の祖先が、進化の過程で陸上に上がっていきながら獲得した生体の最外膜です。つまり乾燥から身を守るというために発達したということでしょう。陸上という乾燥した空気環境で生きていくために、乾燥に対するバリアとして進化してきたと考えられます。
人の皮膚と同種の基本構造が現れるのは、進化の過程では両生類から爬虫類にかけてです。

魚は角質のバリアを持っていません。うろこは真皮の中に埋まっている構造物で主な成分はカルシウムです。角質がない代わりに粘液が覆っているので直接外界と触れ合うことはありません。
両生類になって陸上に進出するようになると、皮膚の表面が角質で覆われているようになります。しかし1層か2層しかない薄いものなので、やっぱり粘液に覆われていたりします。彼らは最も環境変化に弱い陸棲動物なのでしょう。陸上に進出した脊椎動物は、その後、爬虫類、鳥類、哺乳類に分かれました。全部が重層上皮細胞のシートでで きた表皮を持っています。
爬虫類になると、角質層は鱗に変わります。例えば蛇の上皮構造は、鱗の間に脂質が充填されて人の角層のようにレンガ-モルタルの関係に似た構造になっています。
しかし、爬虫類は脱皮します。彼らの角質層細胞が人に比べて互いに強い力でくっついていることが示唆されます。鱗の間隙を埋める脂質も、哺乳類の場合は極性の低い(互いに引き合う性質が弱い)脂質なのですが、爬虫類の場合は極性が高い(互いに引き合う性質が強い)リン脂質です。
鳥類では、爬虫類の鱗、人でいう角層は羽毛になります。哺乳類は鱗は毛になります。毛根には脂腺が付属していて、毛に脂質を付着させる役割を果たしています。
そして人はこの体毛を失っています。名残として人の脂腺はすべて毛の付け根に付属しています。
人はなぜ体毛を失ったのか?そしていつ失ったのか?これには様々な意見があります。偶然か必然か?

角層は、外界に対するバリア機能の9割を担っていると言われています

角層がバリアとして機能するためには、
1:角質細胞の細胞質がフィラグリンやケラチン、それらの分解産物などにより満たされていること
2:角質細胞のセルエンベロープと呼ばれる細胞膜が丈夫であること
3:角層の細胞間隙が脂質により十分に埋められていること

これまで一様な構造であると思われていた角質層が、3つの異なる性質を持ったそうであることが明らかになりました。
一番外側の層は、外から物質が簡単にしみ込み、その物質を保持することができる層、 中間層にはフィラグリン由来の天然保湿因子が大量に存在し、保湿機能を担っていると考えられました。フィラグリン欠損マウスでは中間層の天然保湿因子が著明に減少しており、フィラグリン変異を持つアトピー性皮膚炎患者皮膚でも、この層の保湿機能低下が起こっていると考えられます。また中間層と一番内側の層は、それぞれ異なるバリア機能を持っていることが明らかになりました。
その他、角層を物質が通過する経路は1:細胞自体を通過するものと(transcellular)、2:細胞間を通過 するもの(paracellular)の2通りが考えられています。

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淡明層stratum lucidum:透明層

淡明層

淡明層

指先、手掌、足底など、皮膚の厚い部位において、角質層は極めて厚くなっており、さらに最下部に明 るく見える「淡明層」が存在しています。
淡明層は4~6層の、透明で扁平な死んだケラチノサイトからなり、このケラチノサイトには多量のケラチンと肥厚した形質膜が見られます。

これはおそらく、厚い皮膚のこの領域の強度を高めるのに寄与していて、デスモソームは隣接する細胞間に依然として見られます。

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