皮膚の脈菅皮膚の結合組織では血管やリンパ管がよく発達して網工を成す
血管栄養補給・体温調節・血液の貯蔵
皮膚の血管の特徴
皮血管系が皮膚の栄養供給に預かることは言うまでもありません。
特に表皮は血管を持ちませんが、乳頭内の毛細血管によって栄養を受けています。
すなわち、表皮細胞は細胞間隙を経て毛細血管の血液との間に物質交換を営みます。
皮膚の血管系はこのような栄養・代謝に預かる他に、体温維持にも関わっており、真皮の特定部分への血流を調節することにより、体温調節に重要な役割を果たしています。
皮膚における血管の配置
皮膚に血液を供給する動脈は皮下組織深くに位置していて、ここから真皮へ上行する枝をだしています。
その後、2系統の動脈叢を形成します。
これら真皮内の動脈を細動脈(arteriole)と言います。
- 皮下血管叢subcutaneous plexus
- 真皮深層においてこの枝が吻合して、平面的に広がる網目を形成します。
- 乳頭下血管叢subpapillary plexus
- そしてその皮下血管叢からまた多数の分枝が上行し乳頭下層で第二の網目を形成します。
ここから毛細血管が乳頭層を上行し、真皮乳頭において(皮下直下)よく発達した毛細血管網(ループ/係蹄/けいてい)を構成し、細静脈に移行します。
毛細血管係蹄の頂点では、血管径は7.5~10nmで血球が1列で通れる程度の広さです。
皮膚の静脈系はほぼ動脈の分布に一致して静脈叢を形成しており、血液は最終的に皮静脈へ流れます。
上記のような毛細血管を介した血流の他に、毛細血管を経ずに、細動脈から細静脈に直接血液を流す装置があります。
動静脈吻合グロムス装置(glomus apparatus)・グロームス小体(glomus body)・血管糸球・皮膚糸球
動静脈吻合は無数に存在します。(特に指、趾、爪の下…つまり末梢部位に多い)
あるいは、シャントがあります。(交感神経の支配下にあります。これにより血流を調節して体温維持にかかっているわけです)
シャントshunt
血液が本来通るべき血管と別のルートを流れる状態のことを言い、普通、毛細血管を介さず、直接吻合している箇所のことをシャントと言います。
透析などでよく「シャントを形成する」と言いますが、動脈・静脈を縫い合わせて太い血管を作ることを指しています。
皮膚の血管系はこのような栄養・代謝に預かる他に、体温維持にも関わっており、真皮の特定部分への血流を調節することにより、体温調節に重要な役割を果たしています。つまり、動静脈吻合は皮膚における血液循環を調節する装置なのです。
寒冷化では必要な栄養の供給を維持しつつ、熱の消失を最小限度に抑えるために、シャントによって乳頭層の血流量を減少させ、また温熱下では熱の消失を促すように乳頭層の血流量を増加させます。
動静脈吻合では内皮細胞の壁周囲を多数の平滑筋細胞が何層にも覆う様子が見られます。
体温地の調節には、この様に真皮の血流を調節すること、もう一つは皮膚表面に汗を出すことがあります。
皮膚付属器の血管層
このような基本的な血管の走行の他に、皮膚付属器の周囲には特異的な血管叢が存在します。
エクリン汗腺周囲は特に血管網が豊富で、血流量調節、発汗による体温調節を行っています。
また、成長期毛包周囲も血管に富んでいます。
この様に真皮には豊富な血管網が含まれ、休息中の成人の8~10%を占めています。
血液の貯蔵庫と言われる由縁です。
リンパ管
皮膚には豊富なリンパ管系があり、血管系に一致してリンパ管網を形成しています。
リンパ管は盲菅として真皮乳頭から始まり、それらが集合して血管に伴行しながら2系統のリンパ叢を形成します。
乳頭下層付近に毛細リンパ管が分布しており、後毛細管リンパ管を経て、真皮および皮下の皮膚リンパ管につながっています。
毛細リンパ管の内皮細胞は薄く、周波細胞、基底層を有さず、部分的に断裂しており、疎な膠原線維、弾性繊維で囲まれています。真皮の深層に向かうにつれて内皮は連続性となり、内腔に弁が出現します。血管に比べ、構造形態が不完全です。
集合した皮膚リンパ管液は、所属リンパ節を必ず通った後に静脈に入ります。
種々の物質や細胞の血管を通過しない移動路として機能しています。