皮膚表面のpH=皮脂膜のpH
美容では「皮膚のpH」という言葉がよく使われますが、それは「皮膚自身のpH」ではなく、「皮膚表面の皮脂膜のpH」を指しています。
皮膚表面の皮脂膜のpHは弱酸性です。
皮膚の部位によって、あるいは年齢、性差、部位、季節、気温、時間帯などによってわずかに変動しますが、人種差はほとんどありません。
- 年齢による差:極端な例を挙げるならば、新生児の皮膚表面pHは出生後、24時間はpH6.0~7.0です。(次第に低下して、1週間以内に全領域でpH5.0に近づきます)老年になると、再びアルカリ性になります。
- 性差による差:男性は女性に比べて酸性傾向にありますが、老化とともに差がなくなります。
- 部位による差:四肢の先端にいくにつれて、皮脂は減っていきますが、皮膚のpHは逆に増して(=酸性に傾いて)いきます。
- 季節・気温による差:気温とは逆に昇降します(気温が高くなると酸性に傾き、低くなるとアルカリに傾く)
- 時間帯による差:夜間にはpHが高くなり、アルカリ性に傾きます。
- その他の要因による差:入浴は皮膚のpHを激変させます。高温浴ほどアルカリ性に、低温ほど酸性に。約12時間は入浴の影響が続きます。
- ※ただし、平均値ではなく、個人についてみると、日による変動は非常に少なく、大体0.5以内であるといわれています。
様々な要因により、健康な皮膚のpHは、その範囲がかなり広くなっていますが、通常、弱酸性(約pH4.5~6.0)になっています。
皮膚はこの弱酸性によって細菌やカビなどから護られています。(※これを「酸外套」と言います。)
皮膚はなぜ弱酸性に保たれているのでしょうか?
皮膚表面の「弱酸性」は、汗の中に含まれている乳酸や皮膚表面の脂肪酸などによって与えられるものです。
このように皮膚の表面が酸性であるために、外部より作用するアルカリをある程度中和することができます。
これを「皮膚のアルカリ中和能」と言っていますが、強アルカリが作用すると、当然皮膚はこれを中和しきれずに腐食されます。
(言うまでもありませんが、皮膚を極端な酸性、もしくはアルカリ性にさらすことは、皮膚に一時刺激皮膚炎を惹起します。)
このように、皮膚の上には絶えず弱酸性の皮脂膜がのっているため、皮膚は酸に対しては強く、アルカリに対しては比較的弱い傾向にあります。そのためアルカリ性のものが皮膚にふれるとカブレやすいと言われているのです。