このところ、ナノ化粧品という言葉をよく耳にするようになりました。ナノというのは、大きさを表す単位の一つで、長さでいえば、1ミリメートルの1,000分の1が1マイクロメートル、その1,000分の1が1ナノメートルになります。どの位小さいかというと、ナノ粒子をサッカーボールとくらべると、それはサッカーボールを地球と比べるのと同じ比率になります。
このような単位であらわされる、ごく微小な材料をナノ材料やナノ物質と呼びますが、粒子が極端に細かいことで、同じ素材でも大きな粒子にはない様々な利点があり、現在、工業製品や化粧品、食品、医薬品などに広く使われています。たとえば、ディスプレーにカーボンナノチューブを使うことで、高輝度を得ることができ、抗菌スプレーには銀の細かい粒子を配合できるようになりました。化粧品の分野では、シリカをナノ化することにより、皮脂の吸着性が良くなり、二酸化チタンの日焼け止めは化粧崩れしにくくなりました。
ところが、近年、動物実験でナノ材料の安全性が疑われる結果が相次いで報告されています。例えば、カーボンナノチューブにより中皮腫の発生が認められました。また、ナノ化した二酸化チタンやシリカを、妊娠しているマウスに注射すると、粒子が胎盤や胎児の脳に移行することがわかりました。そして胎児の体重や体長が正常なものよりも1割ほど小さく、流産も増えたとの実験結果が出ています。人では実験に使われたような大量のナノ材料を摂取することはありえないと思われますが、生活の中でどの程度ナノ材料に暴露されているのかを知ることは難しく、今後はリスクを調べたり、安全な材料の開発が重要となります。このような結果を受けて、厚生労働省や経済産業省が、人体への影響や安全性、暴露量などの調査を始めました。
さて、化粧品への応用ですが、すでにたくさんの製品が出回っていますので、例をいくつか挙げてみましょう。
美容成分をごく微小にすることで、細胞と細胞の間にあるわずかな隙間をすり抜けさせ、皮膚の奥まで浸透しやすくしています。本来ならば皮膚のバリア機能がブロックするべき物質が、皮膚の奥まで届いてしまいます。
二酸化チタンなどの無機物をナノ化することにより、光の反射を抑えたり、今まで混合することができなかった材料を混ぜることができるようになりました。このような材料を使った日焼け止めのうたい文句を紹介すると「ナノサイズのUVカット紛体を使用し、肌への伸びもよく細かなきキメにもしなやかにフィット。密着性良く、汗にも皮脂にも崩れにくい薄い透明ヴェールで、紫外線を強力にカットし続ける」とあります。ナノサイズの紛体が、身体のどこまで浸透しているのかが懸念されます。
「ナノテクだから、こすらないでもするんと落ちる」と宣伝しているクレンジングがあります。ナノ粒子を使った化粧品ではありませんが、水で洗い流すとき、一瞬でオイルをナノサイズまでに分散させて流しやすくし、また、ぬれた手で触っても、水をナノサイズにしてオイルの中に閉じ込めるので、クレンジング力が低下しないそうです。ナノサイズになった汚れが皮膚から浸透しないという保証はありません。
例えば、キシキシしやすい酸化チタンとシリコンをナノレベルで均一化して肌なじみを良くしたり、雲母に酸化亜鉛を付着させて透明感や自然なつやをだすことができるようになっています。これらの商品はとくにナノ材料を使っていると明記しているわけではないので、知らないうちにナノ化粧品を使っていることも考えられます。
今までに安全性が確認されている物質であっても、その粒子が超極小になることで、体内に取り込まれて思わぬ悪影響を及ぼす可能性が出てきたわけです。ナノ化の技術は使われ始めたばかりですから、もし健康に悪影響があるとしても、それがはっきりと出てくるのは何十年も先のことでしょう。深刻な事態が起きないよう、一刻も早い安全性の確保が望まれます。また、私たち消費者も便利なものに飛びつくだけでなく、自分の使うものの中身を知って、賢く付き合いたいものです。
さて、ドクターズオーガニックの化粧品は、最先端の技術や特殊な成分を使用しておりません。原料は有機栽培のものを用い、できるだけ天然の成分の組み合わせでお肌のコンディションを整える工夫をしています。ですからナノ化粧品のように、成分がお肌の奥底まで届くことはありませんが、これは裏を返すと、異物が皮膚の表面よりも深いところに到達して、アレルギーや遺伝子に変化を起こす危険性がないということです。
ドクターズオーガニックはこれからも、安心して使える安全性の高い化粧品の開発を続けてまいります。