皮膚移植の解説と働き

皮膚移植(植皮)「皮膚の再生はここまで進んだ」

皮膚の再生は皮膚科や形成外科を中心に、主にやけどなどの治療で発展してきました。
皮膚は体の中でも最も再生能力の高い臓器で、切り傷すり傷などは数ヶ月もしないうちに跡形もなくなりますが、
火傷や傷で広範囲に失われた場合は、体の内外方向に働く防御壁が失われたこととなり、生命の危機に直面します。
これを熱傷救急と言います。

増殖能が高い皮膚でも広範囲が失われたとなれば、速やかに傷口を覆うことは難しく、
では縫合で…となっても、これも広範囲では難しいこととなります。
よく「皮膚の○○%が重度の熱傷、24時間が山です」とドラマなどで見ますが、これは事実、危篤状態にあるということです。
体液の喪失、体温維持、感染の危険など、多臓器に変化をきたす全身性疾患です。

縫合や自然の閉鎖(周囲からの正常皮膚の細胞増殖による再生)が望める時は良いのですが、基底層の大部分と、毛包から供給される幹細胞が破壊された場合(つまり毛包が残存しない場合)、新しい皮膚は2度と再生しません。

救命するためには、一刻も早く皮膚またはその代用品となるもので、創傷部を覆わなければなりません。
皮膚移植が必要となります。

皮膚移植は自分の皮膚でなければ生着しない

今日、腎移植や心臓移植など、他人の臓器の移植が可能になり、少なくとも半永久的に成功するようになってきています。(どこまで永続性があるか、免疫抑制剤の使用によるQRLの低下などいろいろ問題がありますが)
しかし、皮膚だけはまだ、他人の移植は、一卵性双生児を除いて成功例がありません。本人の細胞を使用したものは免疫拒絶反応を起こすことなく生着しますが、他人の細胞を利用したものは免疫拒絶反応により排除されるのです。抗リンパ球血清や免疫抑制剤を用いても拒絶反応は免れないのです。

自己と非自己を見分けるのが免疫機構です。
皮膚がその免疫機構を担う最前線の臓器であるからなのでしょうか(ランゲルハンス細胞とタイトジャンクション)、他人の皮膚が生着して機能を営むことは、現在、皮膚の場合望めないということです。

植皮という言葉も普及して、傷跡の修正だけではなく、美容的にも植皮を希望する方も多くなっています。
形成外科の発達で、植皮の技術も格段に進歩していますが、これも自分の皮膚でなければならないのです。

生命包帯とは

自分の皮膚でなければならないとわかっていても、植皮の範囲が狭ければ自分の皮膚で間に合いますが、重症の熱傷などで広範囲のカバーが必要な時は、人工皮膚で一時的に覆っておき、順次自分の皮膚を採取して、置き換えていく方法がとられています。
一時的に被覆の目的で生理的に生体に近い包帯で覆うこの手法は、生体包帯と呼ばれます。

一刻も早く体液の喪失と感染からの保護、組織の治癒促進、瘢痕形成の予防、機能喪失の予防の措置を取らねばならないので、この手法はその場しのぎということになります。

皮膚移植の種類実は「自家植皮術」は紀元前から施行されている、柴胡の臓器移植なのです。

皮膚の創閉鎖を目指す医療材料は数多くあるため、その分類や用語に関して混同して用いられ、混乱することが少なくありません。

皮膚移植には

  • 自家移植
  • 同種移植(他家移植)
  • 異種移植ー豚皮など

の3つがあります。
植皮の永久生着のためには患者自身の健常皮膚を用いる他はありません。
広範囲にわたる熱傷のため植皮したいが採皮部が足りない場合(ドナー不足:当然であるが。身体の表面積は限られています)、デブリードマン(創傷部の除去)したままでは感染などが懸念されるため一時しのぎで同種や異種移植を行います。
最終的には、自家移植ではなくてはならないということです。

デブリードマン

受傷48時間以内の超早期切除、3~5日目の早期切除、2週目ごろの晩期切除に分けられます。
感染の制御と壊死組織の進展予防という点からは、早期デブリードマンが推奨されていますが、厳重な全身管理と熟練したスタッフの元で症例を厳選する必要があります。

方法としては皮下脂肪を全て切除する筋膜上切除法と、可能な限り脂肪組織を温存する分層切除法があります。
筋膜上切除法の利点は出血量を軽減でき、確実な移植床を作成できることですが、術後の瘢痕をきたしやすく、醜状を残すという欠点があります。可能な限り脂肪組織を温存する場合は、整容的機能的再建ができる反面、術中の出血量のコントロールが難しいという欠点があります。

同種移植

スキンバンク(凍結同種皮膚移植)、家族の皮膚(新鮮同種皮膚移植)で植皮
同種移植は1週間から10日間で脱落します。
この間患者自身の皮膚は培養が進み植皮に用いられる程度の面積を有するようになるので、これを植皮するということになります。

歴史

歴史的には
同種移植の最初の臨床例は、1881年Girdnerが自身の患者から採取した皮膚を熱傷患者に移植した例。
その後1938年Battmanが、体表面積の60%以上の火傷を負った2人の小児患者に同種皮膚移植をしました。
同種皮膚移植がルーチンに行われるようになったのは、Brownらが生体包帯として広範囲熱傷患者にその使用を報告した1950年第初期以後です。

異種移植

同種移植と同じ理由で行う

培養皮膚と人工皮膚同じものは作れない!

皮膚欠損や創傷部位を被覆する目的で使用される人工的な調整物は、全て代用皮膚(skin substitute)と言われます。
一般的な創傷被覆材(wound dressing)もこれに含まれます。

単純な創傷被覆材(参考:第17回日本褥瘡学会)を除く代用皮膚を人工皮膚(artificial skin)と定義すると、人工皮膚は細胞の有無によって組織構築誘導型テンプレート(tissue reorganization template)と培養皮膚(cultured skin)に分けられます。

人工皮膚・培養皮膚の臨床応用結果は、全身熱傷の救命レベルには達しています。しかし未だに自家植皮と同じ品質の皮膚は得られていません。
最近の培養技術の進歩には目覚しいものがあり、各種の幹細胞や主要な体細胞の培養は可能になりました。平面培養技術だけではなく、3次元培養技術も進歩しており、数層以上の複数の種類の細胞を組み合わせた組織培養も行われています。しかしいくら線維芽細胞の培養を行っても、マトリックスまで産生させて正常の真皮を培養操作で作るのは現状では不可能なのです。

皮膚の主要な構成細胞である表皮細胞、線維芽細胞とも、培養方法は1970年台に確立され、臨床使用も80年代から行われており、安全性に関わる問題も解決されています。それでも自家植皮と同じ結果を得られていない原因は、真皮の再生が不十分なことにあります。

組織構築誘導型テンプレート

組織構築誘導型テンプレートは細胞増殖の足場となるコラーゲンのみから構成される人工真皮(artificial dermis)と、死体皮膚を無細胞化した同種真皮マトリックスがあり、いずれも人細胞は使用していません。(一時的な創部の保護を目的とした生体由来の材料や、合成高分子材料からされた代用皮膚も含みます。)

人工真皮

インテグラ(米)integra LifeSciences:コラーゲン(ウシ)・コンドロイチン6硫酸(グルコサミノグルカン)スポンジ+シリコン膜(1996年承認)
日本ではすでにウシアテロコラーゲンのスポンジを使用したテンダーミス(テルモ)ブタアテロコラーゲンのスポンジを使用したペルナックが製品化されていました。
この人工皮膚の最大の特徴は表皮と真皮の2層構造になっていること。有機物(プロテオグルカンや多孔性構造の人工コラーゲンなど)で人工の真皮層の骨格を作り、移植後その骨格の中に、患者自身の組織から血管とコラーゲンができて、本人の真皮が作られる仕組みになっています。
表皮層は極めて薄いシリコン膜からできている擬似表皮で、創傷を閉じ、水分蒸発を調節し、保護バリアとして機能します。いずれにせよ、最終的には自分の表皮細胞を載せます。
しかし、自家植皮との同時適用の場合や、人工真皮で再生した真皮様組織に自家培養表皮を移植した場合に生着率が悪いことも知られています。複雑な真皮構造を完全に再現するには至っていないのです。このことが標準治療にならなかった原因でしょう。

死体皮膚を無細胞化した同種真皮マトリックス

無細胞処理を施した死体皮膚は、同種真皮マトリックスとして米国や韓国(国策として再生医療を推進している)で1992年頃より製品化されています。
同種真皮マトリックスはコラーゲン系人工真皮より正常に近い真皮層を再構築できます。細胞との親和性の高さから、ケラチノサイトや線維芽細胞を培養して培養皮膚を作成してもいます。 日本では死体皮膚が潤沢ではないので国内開発は困難です。

培養皮膚注目!

人の皮膚細胞を増殖培養したもので構成される人工的な皮膚で、損傷を受けた皮膚の代わりに皮膚を再生します。
19世紀の半ば頃より皮膚を培養して増やし、これを広範囲熱傷の治療に役立てようという考えを多くの研究者が持っていました。

表皮細胞のみによって構成される培養表皮、真皮の線維芽細胞のみによって構成される培養真皮、表皮細胞および真皮線維芽細胞の両者によって構成される複合型培養皮膚の3種類に分類されます。

培養皮膚にも、本人の細胞を使用したもの(自家)と、他人の細胞を利用したもの(同種)とがあり、自家培養表皮は「生着」を目的とし、同種培養表皮は「治癒促進」を目的とします。自家培養表皮と同種培養表皮は、期待される作用機序は全く異なっているのです。

同種培養表皮の有効性の本質は、表皮細胞が産生するサイトカインなどの生理活性物質による創傷治癒促進作用です。同種培養表皮は、生着することなく生物学的な創傷被覆材(biological dressing)として機能するのです。(仮に培養技術が未熟なために、表皮幹細胞が維持されない自家培養表皮しか作成できない場合には、移植しても生着することはありませんが、創傷被覆材としての創傷治癒効果は発揮されます)

表皮細胞が産生するサイトカインなどの生理活性物質の産生能を期待して新生児皮膚が汎用されています。
米国では宗教上、男児の割礼が一般的に行われているため、包皮が医療廃棄物として入手できるという背景があります。
もちろん、商業利用についてのインフォームドコンセントを得ることも可能であり、米国において同種細胞製品の開発が進んでいる理由の一つとなっています。

自家培養表皮には重症熱傷、床ずれ、糖尿癪性潰瘍、巨大色素性母斑、瘢痕、刺青などへの治療効果が報告されています。
また、患者由来のメラニン色素も含まれることから、尋常性白斑や、白皮症の皮膚の色調を改善する治療も試みられているようです。

1981年に最初の臨床応用が報告されて以来、培養皮膚の開発がなされて、重症熱傷や皮膚欠損創などに臨床応用されてきました。
しかし期待されたほどの効果は認められず、重症熱傷の標準的な治療法にはならなりませんでした。
なぜなら培養皮膚には汗腺も毛根もありませんので、移植した場所に正常の皮膚が再生したとは言えないからです。
あくまで「全身熱傷のような緊急時に使われる、高機能人工皮膚」というのが正直なところかもしれません。
しかしながら、京都大学の山中教授が人工多能性幹細胞(ips細胞)の作成に成功したことにより、培養皮膚も再生医療の1つとして再び脚光を浴びてきています。

グリーン型表皮細胞シート

1975年、RheinwaldとGreenが効率的な表皮細胞培養法を開発しました。
このGreen型培養表皮(1988年、Epicelとして製品化)は、1cm2程度の正常な皮膚組織から表皮細胞を分離して培養すると、約2週間で1,000cm2を超える培養表皮シートを作成することができます。

日本初の製造販売承認を取得したのは自家培養表皮ジェイス。(ずいぶん開発遅れてしまいましたね)公的医療保険が使える再生医療製品第一号です。2007年、2009年には保険収載され公的保険制度で広く使用できます。

自家培養表皮移植による整容治療

皮膚表面の整容治療では、どの部位の皮膚を培養して移植すれば、移植部の皮膚の色調や性状が最もよいかが重要な問題となります。
培養表皮は場所特殊性を有しています。移植部に近い皮膚を培養し移植すると見た目がよく、足裏などの表皮を培養して移植するとその表皮に類似した構造と色調になってしまうのです。

植皮術、皮弁術移植の手技

植皮術は皮膚欠損部を皮膚で補填する手技です。
遊離植皮術と有茎皮弁術に大別されます。

遊離植皮術

植皮術、皮弁術

血行を途絶した皮膚を移植する方法で、移植する皮膚の厚さ(真皮部位の厚さ)により、大きく分そう植皮術、全層植皮術の2つに分類されています。
皮膚を遊離移植した場合、1~2日目は移植床の層面より漏出した血漿により栄養・湿潤状態が保持され、3~4か目で移植片と移植床の毛細血管が直接吻合、5~8日目に血行が再開することで生着します。約4日ほど虚血状態となります。移植皮膚の生着のためには、移植片と移植床に血管網の再構築が必要となる。したがって、移植床には良好な血行が要求されます。

分層植皮術
表皮から真皮中層。採皮した皮膚をメッシュ状にすることにより生着率を高めたり、広範囲へ植皮可能とする網状植皮術も行われます。
全層植皮術
真皮の厚さ

有茎皮弁植皮術

血行を保って皮膚を移植する方法 皮膚と皮下組織を生体から完全に切り離さずに移植する方法で、皮弁自身が血液供給を維持しています。

薄い皮膚の方がつきは良いし、採ったところにも跡が残りません。
しかし耐久力に乏しいことがあるので、しばしば一時的なカバーとして使われることが多いです。
植えた皮膚が回りより濃くなることも多く、だんだん縮んで縮緬皺のようにあることもあります。

厚い皮膚は、いろんな点で手術操作も繁雑になり、完全に100%つかせるのは、相当な熟練を要します。
しかし一旦つけば薄い皮膚よりずっと回りによくなじみ、耐久性もあります。

分層植皮術は早期の創閉鎖、全層植皮術は拘縮の解除として使われることが多いようです。

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