汗腺の解説と働き

汗腺sudoriferous glands/sweat glands 皮膚腺のひとつ。発汗は我々が最も身近に接している生命現象です。

汗腺は、汗を作り、皮表に分泌して、体温調節作用と小規模な排泄作用をいとなむ腺です。

汗腺は真皮深層から皮下組織に埋まり、皮膚表面もしくは毛包に開口する上皮性の器官です。

発汗の主な役割

汗腺の種類

  • 温熱刺激によって全身に発汗をきたし、汗が蒸発する時に皮膚表面から気化熱を奪って熱を放散することで、体温が上がりすぎないように調節しています(冷却器官)。これを担っているのが汗腺(エクリン汗腺)です。
  • 過剰な塩分を除去する排泄補助器としての機能。
  • 汗中の水分は皮膚表面に適度な湿り気を与える作用があり、また汗には尿素、乳酸などの保湿作用を有する成分も含まれています。
  • 手掌や指先において、皮膚表面の適度な湿り気は摩擦力を高め、滑りにくくしています。
  • 粘膜面に多く存在し、感染防御に関与している免疫グロブリンIg-Aや、感染防御に役立つ抗菌ペプチドなど、各種サイトカインも多く含まれています。
  • 熱傷の時に表皮細胞を補給する幹細胞の保管する倉庫としての役割。
  • 発汗は微生物を皮膚表面から洗い流すのを助けます。

汗腺の数と分布

  • 人体における汗腺の分布密度は約130~600個/cm2。総数は約300~400万個。(※全ての汗腺が活動しているわけではありません)
  • 発汗機能を示す能動汗腺数は日本人で平均230万個、また個人差や環境温度で変化します。
  • 能動汗腺数の分布密度は、多い順に前額、足底、手掌、手甲、足甲の各部。
  • 少ないベスト5は前胸部、背部、腹部、臀部、大腿部であると言われますが、これも個人差が激しいです。

汗腺の種類

汗腺の種類

汗腺には
エクリン汗腺(小汗腺)、
アポクリン汗腺(大汗腺)、
アポエクリン汗腺(第3の汗腺)
の3種類があります。(※アポエクリン汗腺を除く2種類とである、という研究者が大多数ですが…)

これら3種類の汗腺は、発生・構造・機能においてそれぞれ異なっています。

汗腺の発生

汗腺の大部分は、表皮の基底層が真皮内に下方成長したものに由来する。この芽が真皮へ深く入ると、近位部は汗腺の導管を形成し、遠位部はコイル状になって腺の分泌部を形成する。 汗腺は5ヶ月前後で、手掌、足底に現れ、少し遅れて他の領域に現れる。

エクリン汗腺の発生

エクリン汗腺の原器は胎生3~4ヶ月頃、最初に手掌と足底に出現し、胎生5ヶ月末ですべての体表面にエクリン汗腺の原器が出現、胎生8ヶ月には成人と同様の構造を示すエクリン汗腺が形成されます。

エクリン汗腺(小汗腺)eccrine sweat gland 体温調節

温熱刺激によって全身に発汗をきたし、体温調節に関与しています。
エクリン汗腺は系統発生学的に新しい汗腺で、特にヒトで最も発達し、体表に広く分布しています。

平均的な成人のエクリン汗腺約300万個が集まると、そこから分泌される水分量は概ね腎臓1個分に相当し、分泌可能量は10Lに達します。
1つのエクリン汗腺が分泌する汗の量は1分あたり約2~20ナノリットル(ナノリットル=10億分の1リットル)とわずかな量ではありますが、全身に換算した場合、1日に産生する汗は平均700ml~10L(高温環境下、または激しい運動時)にものぼるのです。
この分泌量は他の外分泌線における分泌量をはるかに上回ります。

働き・機能発汗作用

発汗作用は運動時や高温化において体温が上昇するのに対抗した生理学的反応であり、ヒトでは体温調整を行う上で最も効果の期待できる手段です。
体が熱いと感じると、自律神経の交感神経が活発化し、エクリン汗腺に体温を下げるように指示が出されます。
指示されたエクリン汗腺は血管から血液の成分を受け取って濾過します。
そして、汗の成分だけを体外に放出することで、その汗と一緒に表面の熱をにがすことで体温を下げるようにしてます。

100gの汗をかくと、それが全て皮膚から蒸発したとして、1gの汗の蒸発は0.58kcalの熱を奪うので、体重70kgの人では体温を1度下げることができます。
ただし蒸発せずに体表面からポタポタと滴り落ちてしまった汗は、本来の目的を達成できないムダな汗となります。

また、精神的緊張や味覚刺激(香辛料などの刺激)によっても発汗します。

発汗の種類

体温調節性発汗(温熱性発汗):暑い時や激しい運動時

体温調節性発汗(温熱性発汗)

身体の体温調節を助けるというエクリン汗腺の役割は、体温調節性発汗として知られています。
体温調節性発汗の際には、まず額と頭皮に発汗が生じ、ついで身体の残りの部分と広がり、最後に手掌、足底に生じます。
視床下部の体温調節中枢によって発汗量が制御されます。
この汗は暑さという刺激が加わっても体温がある閾値に達するまで発現しません。
発汗の中でも、水分として認識される前に皮膚から蒸発してしまう汗を不感性発汗(後述の不感蒸泄)、大量に排出され、皮膚状に水滴として見える汗は感知性発汗と呼ばれます。

精神性発汗

精神性発汗

エクリン汗腺は恐怖や困惑などの精神的ストレスに反応して汗を分泌することもあります。
瞬時に微量で相動的に発現、感情と関係が深い辺縁系や視床下部、大脳新皮質の全運動野などが関与しているとされています。
このタイプの発汗は体温調節性発汗とは対照的に、手掌、足底、腋窩に生じ、次いで身体の他の部分へと広がります。
感覚的精神的刺激を何回も受けると慣れが生じ、その刺激に応じて発現していた汗は減少します。
精神性発汗の場合はアポクリン汗腺も刺激されます。
手掌と足底の精神性発汗により、手や足がより滑らないようになることは、危急時の動作や敵との闘争に際して役に立つのです。

味覚性発汗

味覚性発汗

辛い物や刺激の強いものを食べた時に出る汗のこと。

不感蒸泄

不感蒸泄

汗には目に見える発汗と、目に見えない不感蒸泄があり、不感蒸泄は呼吸によるものと皮膚面からのものがあります。
発汗をしない冬季などでも不感蒸泄は行われ、皮膚面からのものは不感蒸泄の70%を占めます。
不感蒸泄は汗腺からではなく、角層を通して皮膚面から行われるため、角層細胞が10層以下と薄く顔面ではその量は若干多くなります。その量は、常温安静時には健常成人では1日になんと約900ml。皮膚から約600ml、呼気による喪失分が約300ml。1L近くにもなるのです。
不感蒸泄の1日量は、体重1kgあたり15mlであるとされています。体温が1度上がる毎に15%増加し、また外気温が30度より1度上昇する枚に15%増加するようです。

分布

エクリン汗腺の分布

エクリン汗腺は、人類と類人猿では、口唇や亀頭など一部を除くほぼ全身に存在し、額・手掌・足底・腋にもっと多く集まっています。
(それ以外の多くの哺乳動物では、エクリン汗腺は足底のみに存在していますが、豚や牛の場合は鼻先に、尾長猿の場合は尾の一部にあるといったケースもみられます)エクリン汗腺は足底で最も多く(630個/cm2)見られます。

構造

エクリン汗腺

エクリン汗管の分泌部は、真皮深層から皮下脂肪組織内に位置します。
分泌部から真皮内を上行し、表皮内をコイル状に巻きながら皮膚表面(皮丘)に開口します。

分泌部では2層の分泌細胞と、その周囲を取り囲む扁平な筋上皮細胞があり、平滑筋である筋上皮細胞が収縮することで貯留した汗を汗管に押し出しています。
汗管が蛇行しているのは、長さを稼ぐことでNaClを再吸収するためと、貯留のため、分泌部の蛇行は汗の生産のためです。

エクリン汗腺の分泌部も道管も、共に渦巻き状で、内腔は狭くなっています。

分泌部は3種類の細胞で構成された重層立方上皮…明調細胞・暗調細胞・筋上皮細胞
分泌細胞の側面は明瞭な陥入があり、所々で開いて小菅を作っている。この小菅は腺腔に開いている。
弾性繊維で囲まれています。交感神経節後線維の無髄神経が分泌部を取り囲み、汗腺周囲神経叢が形成されています。
明調細胞 clear cell〜柱状(錐体形、立方体)
汗を産生する。この細胞はミトコンドリアに富み、微絨毛が発達して表面積を拡大している。汗腺を取り巻く神秘は毛細血管にとみ、そこからの間質液は明調細胞を介して直接道管の内腔へ輸送されるか、もしくは、内腔に通じる細胞間分泌細管を経て輸送される。
暗調細胞 dark cell〜不揃いな形をした錐体形の細胞
機能はよくわかっていないが、細菌に対する自然免疫としての働きを持つと思われる。内腔表面に最も近いところに並ぶので基底板には接しない。暗調細胞は粘液細胞であり糖タンパク質を含んだ顆粒で充満している。
筋上皮細胞 myoepithelial cell
コリン作動性の交換刺激に反応して収縮して分泌物を内腔へ放出するのを助ける。
導菅(汗管)
導管は垂直に上方へ行くにつれ真っ直ぐになり、ミトコンドリアで充満しNa+/KーATPaseに飛んだ膜を持つ抗酸性の2層の立方上皮となり、表皮の上層ではケラチノサイトに置き換わる。(表皮を通過する際に再び少しコイル状になる。この様子は足底の厚い表皮で特に顕著である)内側のそうは大きく立方体で、明瞭な微絨毛が管腔面を縁取っている。
導管の細胞はナトリウムイオンを吸収して電解質の過剰な流出を防ぐ。
・表皮にかかる外力のズレに汗管は破綻しにくい構造となっています。

発汗はコリン作動性

また、発汗は交感神経(エピネフリン作動性)から連携して、アセチルコリン(コリン作動性)に支配されています。
通常、交感神経緊張亢進状態では、伝達物質はエピネフリンですが、これが皮膚に作用すると末梢循環が低下して発熱には不適合な状態となります。
一方、アセチルコリンは血管拡張に働き、血流が増えるので、放熱に適している、というわけです。
このような事情から、汗腺へはアセチルコリンが作用することになったと考えられます。

体温調節

発汗がないと、運動時や高温環境下で体温が上昇し、熱中症になりやすくなります。
分泌された汗は、蒸発する時に気化熱を奪い、体温を低下させる働きを持つためです。
ヒトは、人体の1~2%の水分が失われただけで、意識障害を起こします。

10%はいざという時のために筋肉内に備蓄されています。(高齢者は筋肉量が低下するために備蓄が少ない)

また、深部体温上昇の方が、皮膚表面温度上昇よりも強い発汗刺激になります。
それは、ヒトでは体温42℃で細胞内での酸素が働かなくなり、機能低下に続いて細胞が死んでゆくためです。
インフルエンザ感染や敗血症、脳炎などの際に見られる、このような極限状態の発熱の際は、大量の発汗により体温を下げ、細胞を壊死から守ろうとします。ですから、インフルエンザで発熱している時は、発汗の準備段階にあるため、「解熱してはいけない」とされています。

なお、能動汗腺は加齢とともに減少します。
加齢に伴い足を使わなくなり、発熱量が減り、ひいては発汗の必要が減少するため、下肢末梢から徐々に大腿さらに腰部へと汗腺の数が減ってゆきます。
そのため、発熱時には下半身に発汗しない分だけ上半身に発汗が過剰になります。腰回りに汗が出なくなったら老化している標なのです。

体温は37℃

体温は、脳に組み込まれたサーモスタットの働き(これはかなり複雑なので別の機会に)で、ほぼ37度のなるように調節されています。
この体温で体の機能が上手く働くようになっているのです。
体を動かすことによって発生する熱と体から逃げていく熱とが上手くバランスを取っているのです。
体の各部位の熱は血液の循環によって運ばれ、外環境と接触し、輻射、伝導、対流などによって体外に放散されます。
さらに、体表面に分布する汗腺から汗が分泌され、汗の蒸発による熱放散も起こります。

【体から生み出される熱(産熱)】
・基礎代謝熱(生命維持のため)〜肝臓、脳、腎臓などで発生
・筋運動熱(スポーツ活動時など)
・ホルモン
・細胞代謝  など

この産熱と放熱のバランスが崩れ産熱量が放射量を上回った時、熱は体に蓄積され体温が上昇、逆の場合は体温が低下します。

こどもの体温調節

小児と成人ではエクリン汗腺の数に差はありません。つまり体表面積の少ない小児の方が分布密度は高くなるのです。
そして、汗腺の能動化は2歳半で成人の値になります。これ以降小児と成人ではエクリン汗腺の能動数には差がないことになります。

しかし、小児の発汗機能は未発達で、大人よりも発汗量が少なく、多くの汗を必要とする条件ほどその差も大きくなります。
これを補うため小児は頭部や躯幹部の皮膚血流量を増加させ、大人と同等の放熱をしています。

ヒトの産熱量は体重に比例します。
小児は産熱量に比し体表面積が広くなるので、小児の体は物理的に熱し易く冷め易い特性を持っているのです。

気温が体温より低い場合は非蒸発性熱放散さんにより、環境が体表の熱を奪ってくれますが、逆の場合、(夏の炎天下など)熱は体に入ってくるようになります。
このような環境条件では汗が唯一の放熱手段になるので、子供の未発達な発汗能力は体温調節上不利になるのです。
高温環境では、大人以上に過酷な熱ストレスになり、特に持久的運動には不向きです。
自分で水分を補給したり、衣服を脱ぐなどができない小さな子供は熱中症を発生する危険が高まります。

子供は表皮全体が薄く、最外層の角層が薄い。このため、とくに新生児・未熟児は皮膚からの不感蒸泄が多くなります。
また体重に比して体表面積が大きいため、体重あたりの不感蒸泄は乳児では成人の2.5~3倍の量となります。汗腺数も密です。
皮膚のpHが成人では4.2~5.6に対して、新生児では6~7であり、酸度が低いことによって皮膚の自浄作用が弱いのです。

胎児は羊水中にいますが、出生後の児は空気にさらされます。
空気にさらされた時に、皮膚からの水分の蒸発が多いと、すぐに脱水になってしまうので、水分が過度に蒸発しないように、皮膚の表面に工夫が必要です。
これがまさに、人の皮膚バリア構造であり、主に角層という0.02mm程の細胞群と基質とからなります。
人は成長とともに、表皮バリア機能も強くなります。すなわち環境湿度の低下に対して、容易には水分を喪失しなくなります。

近年エアコンの普及や運動量の低下により発汗の必要が低下したため、子供の汗腺は世代が若くなるに従い少なくなっており、今や半分くらいではないかと予測されています。体温調節ができなくなってきているということです。

高齢者の熱中症

熱中症の65歳の割合を見ると、1994年以降年次増加しており、高齢者の熱中死亡数が相対的に増加しています。
高齢者の熱中症発生場所に注目してみると、自宅(約45%)、屋外道路・駐車場が多く、睡眠中の発症が多いのも特徴です。
体温調節機能が低下しているため、体に熱がこもりやすく、また暑さや喉の渇きを感じにくくなるため、熱中症が発生する危険が高くなります。

汗の成分

血液や間質液を原料として汗の原料が作られます。
つまり、細胞や血液を同じように電解質や有機物も含まれているのです。

エクリン汗腺で産生される汗の成分は水(99%以上)、イオン(大部分がNa+およびCl-),尿素、尿酸、アンモニア、アミノ酸、グルコース、乳酸です。
主成分は水と塩化ナトリウム(塩分)で、分泌部で作られた汗(前駆汗)が汗管を通過するとともに、その塩分の再吸収が行われ、最終的に低張(塩分が低濃度)な汗が皮膚表面へ排出されます。
この塩分の再吸収は、腎臓で糸球体から濾過された塩分が尿細管で再吸収されるのによく似ています。必要な塩分を体内にとどめるためのメカニズムなのです。

・エクリン汗腺のあせは身体から尿素、尿酸、アンモニアなどの老廃物を排出する上でも、小さな役割を担っていますが、
この老廃物を排出する上では、エクリン汗腺よりも腎臓の役割の方が大きくなっています。

汗は塩辛い?

塩辛い、というイメージのある汗ですが、実は大量にかいた時だけ塩辛い、というのが本当です。
通常汗は、汗管を通る際、ナトリウムイオンや塩素イオンを再吸収されるため、相当塩分濃度の低い分泌物です。
ところが、大量の汗をかいた時には、汗が素早く汗管を通過してしまうため、ナトリウムイオンや塩素イオンを再吸収できず、そのまま分泌されてしまうことになるのです。そのため、大量にかいた汗は「塩辛い」ということになるのです。
汗を多くかいた時に、電解質を含んだ飲料が必要なのはこのためです。

分泌形式

開口分泌

汗管内側に面した細胞内で作られ、膜につつまれた状態の汗が、細胞壁と融合する形で外に分泌されます(開口分泌)。
そのため、不純物を含まないエクリン汗腺由来の汗は無色透明です。

汗疹(あせも)について

暑い環境では、発汗により皮膚の角層は湿り微生物が繁殖します。
これらの菌の出す菌体成分は汗孔から透過し、それを取り巻く細胞を傷つけ、細い汗管は閉塞され、汗の産生が盛んであれば貯留し、ついに汗管が破裂し汗がもれだすことになります。汗には、タンパク質分解酵素や炎症を起こすサイトカインが含まれており、それが皮膚の組織を障害して、汗疹(あせも)として知られる皮膚炎の汗疹ができるのです。

アポクリン汗腺(大汗腺)apocrine sweat gland 哺乳類の芳香腺が退化したもの!!つまり一種のフェロモン?

アポクリン汗腺による発汗はアドレナリン作動性と考えられ、主に情緒刺激で発汗します。
アポクリン汗腺は体内調節性発汗の際には機能しないため、体温調節の役目は果たしておりません。
数はもちろんエクリン汗腺より少ない。

アポクリン汗腺はエクリン汗腺に比べ発汗量が多く、腋下の発汗にはアポクリン汗腺が大きく関与していると考えられます。(腋下にもエクリン汗腺はあります)
また、アポクリン汗腺からの汗は、エクリン汗腺からの汗に似て水様ですが、発汗量はエクリン汗腺より多く、持続的です。

働き・機能

アポクリン汗腺の分布

哺乳類の芳香腺が退化したもので、腋のした、乳輪、外耳道、鼻翼、鼻前庭、臍囲、外陰部、成人男性の顔面の髭の生えた部分の皮膚に多数が、またその他の部位にもわずかに存在しています。

乳腺やまつ毛腺もアポクリン腺の一種で、毛器官とともに発生し、出生後に一時退化し、思春期にふたたび発達します。(乳腺はアポクリン汗腺の仲間で、乳を出すことに発達進化したものと言われています)

アポクリン汗腺の発育は性ホルモンに依存し、思春期までは未完成のままです。
そのため、性機能との関係が考えられています。(女性では、腋窩のアポクリン汗腺の分泌活動は月経周期と関連して変動し、特に月経前期や妊娠期に分泌活動が活発になる)

アポクリン汗腺は、エクリン汗腺と共に精神性発汗の際に刺激されます。

構造

アポクリン汗腺

アポクリン汗腺は一般にエクリン汗腺より深い所にあります。
アポクリン汗腺の汗管は、エクリン汗腺のように皮膚表面に直接開口せず、毛包の脂腺開口部の上方開口しています。分泌部はエクリン汗腺よりも非常に大きく、真皮深層から皮下組織に存在し、大型で広い管腔を呈します(顕微鏡下で一見して区別されます)。アポクリン汗腺周囲は神経及び毛細血管に富んでいます。

分泌部は単層立方形の細胞からなり、基底側にある筋上皮細胞から成っています。
細胞の先端には外分泌を行う分泌顆粒が無数に存在します。

汗の成分

アポクリン汗腺からの汗は粘稠性で、乳白色または黄色っぽく見え、無臭ですが、皮膚表面に出ると常在菌で分解され臭気を帯びるようになります。
アポクリン汗腺由来の汗が乳白色または黄色っぽい色をしているのは、エクリン汗腺由来の汗と同じ成分に、脂質とタンパク質が加わっているためで、これらの成分が体臭のもととなっています。

この臭気が強いと俗に「わきが」と言われる悪臭になります。

腋臭(わきが)について

思春期以降、アンドロゲンの影響でアポクリン汗腺、皮脂腺の活動が活発になり、体臭がはっきりしてきます。
アポクリン汗腺の出す汗や皮脂の成分が、毛穴や皮膚の表面にいる微生物(常在菌)によって分解されてできたtransmethl–2–hexenoic acid を主体とした、いくつかの低級脂肪酸により、体臭が生じると考えられています。
皮脂やアポクリン汗腺の分泌が盛んな白人社会において香料が発達してきたように、皮膚炎などを起こさないという条件のもと、心地よい香料を用いることも対人関係を考えたスキンケアかもしれません。
腋臭(わきが)は白人や黒人では正常の現象で、ほとんどすべての人にありますが、蒙古人種、特に日本人では少数の人に、しかも軽度のものが見られるにすぎません。
しかし、腋臭のない人でも腋窩部にアポクリン汗腺がないのではなく、その量が少なく、その活動が弱いということです。

分泌形式

かつてアポクリン汗腺は細胞の一部がちぎれることにより分泌物を放出する離出分泌、と考えられてました。一部の細胞の管腔側の細胞が芽を出すような様相を呈することから、分泌様式がアポクリン型(離出分泌(Apocrine secretion))と信じられましたが、最近の証拠ではこのような様相は、固定時の人工産物によるものであるとわかりました。
名前も分泌様式によって命名されています(アポクリンは離出分泌(Apocrine secretion)の意です)が、この命名は誤りです。
近年、実際はエクソサイトーシス(開口分泌)による漏出分泌であることが分かってきました。

ちなみに離出分泌で代表的なものは乳腺における乳汁の分泌 全分泌で代表的なのは皮脂腺です。

2つの汗腺

エクリン腺は「進化した汗腺」と考えられ、毛と結びついていないのに対し、アポクリン腺は「退化した汗腺」と考えられ、毛と結びついています。そして、ヒトの汗腺はほとんどが エクリン腺で、アポクリン腺は腋などに残っているのみです。
なぜヒトでエクリン腺が進化してきたかというと、どうもアポクリン汗腺と比べ、発汗によって体温を下げる効率が大きく、毛の退化とともに発達してきたようです。それと並行してアポクリン汗腺は退化していったと考えられます。

アポエクリン汗腺eccrine sweat gland 体温調節

アポエクリン汗腺は研究者の間で存在を否定する論文もありましたが、現在ではその存在は確定しています。

アポエクリン汗腺はアポクリン汗腺に類似した分泌部を有していますが、エクリン汗腺と同様に表皮に直接開口しています。
構造的にはエクリン汗腺に近く、既存のエクリン汗腺分泌部がアポクリン汗腺分泌部のように変化して形成されると考えられています。

能動汗腺

すべての汗腺のうち、活動している汗腺のことを能動汗腺と言います。
クーラーが普及しはじめた1970年代以降の世代はあまり汗をかけないといわれています。
能動汗腺の数は2~3歳で決まるといわれています。生涯を通じてその数はかわりません。
この時期に汗をかかないと、汗腺そのものが活動しなくなります。

汗というのは、体温調節や代謝を高めるにはとても重要です。
能動汗腺が少ないとバテやすく、熱中症や自律神経失調症になりやすくなります。
エクリン汗腺の数は、200~500万個、日本人では能動汗腺は230万個くらいといわれていますが、
子供たちは今やその半分くらいではないかと予測されています。

また、寒い地域で生まれた人と暑い地域で生まれた人でも違います。ロシア人の能動汗腺は平均190万個はどです。
人は環境に合わせて進化しています。ある意味当然のことですね。
面白いのは、熱帯の人たちが能動汗腺が多いから汗かきかというとそうではなく、代謝を下げたり皮膚温を高めるなどの適応を体がしており、汗を大量にかいての脱水から身を守ってます。
「冷房病」は別名「能動汗腺衰退症」といいます。体温の調節能力の低下です。
もともと人間が温度変化に対応できるのは±5℃くらいといわれています。
それ以上の急激な温度変化を度々受けると、肩こり、頭痛、不眠、冷え性などの自律神経失調症になります。

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