無毛皮膚(手掌、指、足底、足趾…すなわち、手のひらや指さきにある柔らかく毛の生えていない皮膚)の表面は平滑ではありません。多数の細かい溝が見られます。
直線状だったり、渦巻き状だったり、輪状だったり、そう私たちが手掌で指紋、足紋、掌紋と呼んでいるものです。
指紋は表皮に平行に走る隆起、すなわち皮膚小稜によって形成されています。
表皮が真皮に向かって下向きに突出し、乳頭層の真皮乳頭の間に入り込んだもので、表皮突起とも言います。
胎生3ヶ月ですでに見られます。
この溝は浅いものと深いものが存在し、皮溝と呼ばれています。
皮溝の走行方向は身体部位により定まっており、身体中の皮溝を総称して皮膚紋理と呼び、皮膚小稜のパターン、すなわち指紋の研究を皮膚紋理学と呼んでいます。
皮膚小稜(指紋など)はある程度遺伝的に決まっていて、一卵性双生児でさえ異なるパターンを示す個人に特有のものです。
皮溝には溝が深いものと浅いものがあり、浅い皮溝で囲まれた小さな隆起を皮丘といい、そしてこの幾つかの皮丘が、より深い皮溝によって囲まれて多角形の皮野を形成します。
毛は深い皮溝から生えており、汗腺の汗孔は皮丘に開口します。汗腺導管は皮膚小稜間の中央部にあるということです。
皮膚小稜は、強い機械的ストレスを受ける部位において、表皮と真皮との間に強力な結合を形成します。
表皮は基底板とヘミデスモソームで接着し、そのデスモソームからケラチン線維が結合し、基底板と真皮はコラーゲンで形成される係留線維があるわけですが、皮膚小稜のジグソーパズルのような凹凸によってさらに強固になります。
指紋があることによって、手のひらや指先の、柔らかく、毛の生えていない無毛皮膚に、波状の模様ができ、ざらついた構造になります(表面積が増大します)。すると摩擦が発生し、手で物体を握っても滑らないようになり、保持力が増します。
また、物体を触って認識するときも、指紋と物体間の摩擦力によって物体表面の特徴を際立たせることができ、木目などの細かい不規則な凹凸を認識することができます。
さらに、指紋は皮膚の硬さや剛性を増強しており、外部の物体に触れた時や裸足で歩いた時のダメージから皮膚を防御することができます。
表皮の面積が増大するために、皮膚小稜の頂上部との境界に位置する「なでる」「ゆっくりとした振動」を感知するマイスネル小体の数が増えて感受性が高まります。
マイスネル小体は皮膚小稜の両端に沿って規則正しく並んでいて、汗腺導管の間に密に存在する「圧」を感知するメルケル細胞と指紋の隆起ごとに交互に存在しています。
割線とBlaschko線
皮膚の深部でも同様に、網上層内の弾性繊維が身体部位により決まった方向で走行しています。これを割線(ランゲル裂線)と言います。
これは骨の向き、筋繊維走行方向、関節運動によって皮膚のこれらの領域に生じる自然張力に起因します。
このため皮膚に円孔を空けた際には、皮膚の張力が強い方向を長軸とする楕円ができます。この方向を図示したものを割線といいます。(図)
手術の時にこれは重要な意味をもち、この割線に沿って切開すると、ごく小さな瘢痕のみを残して治癒することになり、線維の列を横断するように切開すると、コラーゲンが破壊され、創傷が大きく開いて幅広く厚い瘢痕が残りがちとなります。
もう1つ、皮膚にはBlaschko線(図)があります。母斑などの皮膚疾患の一部はこの線に沿って生じることがしられています。
これは胎生期に皮膚に分化するクーロンの拡張方向を示していると考えられています。
「肌理が細かい」とか「整っている」とよくいいますが、これは正常な美しい肌という褒め言葉。
言い換えれば肌理が整ってるということは、スキンケアがうまくいっていおり、健康状態も良いという証になります。
保湿能の高い皮膚の表面は皮丘がふっくらとしていて、肌理が整然と整っており、表面に鱗屑はありません。
また、紫外線が皮膚に当たると、肌理の細かい皮丘と皮溝の細かい凹凸で一部は散乱されます。(紫外線防止作用も持っています)
肌理の細かさや整い具合は、表皮の厚さと硬さ、細胞間基質の柔らかさ、乳頭層の厚さ、真皮網状層の硬さなど、様々な要因によって決まります。肌理が細かく整ったお肌になるためには、肌を最も理想的な状態にしておくことが大切。具体的には、角層に充分な水分があること、理想的な食事や生活習慣・スキンケアが行われていること、肌負担の少ない化粧方法など。
ですから、肌理の細かな肌を目指す、というよりは、現在の自分の生活習慣やスキンケアが、肌に負担をかけていないかのバロメーターとして理解するのがいいでしょう。
自分で肌理を確認するためには、触ってみれば、その滑らかさでわかると思います。
よく「きめ細やかなサービス」なんて言いますが、これは肌の「肌理」からきているのでしょうか?
ちょっと調べてみました。
きめとは、モノや肌の細かい模様。また、その模様の具合によって生じる滑らかさ。木目。
「きめ」は「木目」または「肌理」であり、「きめが細かい」とは、皮膚や物の表面が細かく滑らかであることから、
「繊細で細かい点に配慮が行き届いている」とか「緻密である」とかいう意味になるのです。
すなわち「きめ細かい」のが、良い木材なのです。
ちなみに、「きめ細やか」とは、「きめが細かい」と「こまやか」とを混同してしまった表現でしょう。
「きめ細やか」という日本語はありません。きめ細かい+こまやかとが合体したのでしょうか?
日本語のこのような使い方はこのごろ良く話題になります。
本来の意味からはずれたいいまわしが、正しい使い方として認知されつつあり、辞書でも例文に入っているらしいです。
逆に正しく使うと通じなかったり、間違っていると思われたりします。
このことを嘆く またはきちんと使われてないと気持ちが悪いという人が私の周りにも何人もいます。
言語はコミニュケーションツールと考えると通じればと思う私を、教養がそこに現れると言い放った友人がいました。
小じわは皮溝とよく似た陥没ですが、しわと肌理は別のものです。
どちらも乳頭下層までの、真皮網状層に達しない陥没です。
角層までの表層ピーリングで小じわを消せるのはそのためです。
しかし皮溝は日常の皮膚伸縮により常に伸展され続けている為に、皮溝表皮の裏打ち構造として表皮直下に並走する
コラーゲン細繊維があるのに対して、小じわには、直下の並走するコラーゲン細繊維がありません。
これは小じわが無理に外から引き延ばさない限り伸びることはなく、日常の大部分の期間を通して陥没したままの状態である為、
裏打ちのコラーゲン細繊維が、不要だからです。